
遭難原因でもっとも多かったのは「道迷い」の174人。次いで「転倒」の171人、「病気」114人、「滑落」110人、「疲労」80人、その他「転落」「野生動物襲撃」「悪天候」「落石」などでした。

「道迷い」が多いのは、急激に登山・トレッキング初心者が増え、読図技術に乏しい人が準備不足のまま山に入る機会が増えた結果かもしれません。

単独で入山し、ケガなどで身動きできなくなり進退窮まったというケースもあるでしょう。軽いねんざにもかかわらずペースダウンを余儀なくされて下山が遅れ日没を迎えてしまった、なんて話も聞きます。
これらはむしろ身近な里山のほうがあてはまるかもしれません。なぜならこうした(地元民しか知らないような)山は、丸一日歩いて(走って)いても人に会うケースが極端に少ないからです。

いつも走っている近所の低山だからと単独・軽装で走りに出かける→足を滑らせてケガを負い身動きがとれなくなる→運悪くケータイ電波の圏外→誰も通りかからないまま日没→低体温症で絶体絶命・・・これからの季節、そんなケースに陥らない保証はありません。
とくにトレイルランニングはどうしても軽装とならざるを得ないため、上記のように万が一の状態に陥った場合のリスクがつきまといます。
低山でも起こり得るこうしたリスクを回避するため、警察庁では以下の山岳遭難防止対策を呼びかけています。
●登山計画書の提出
登山計画書は、家族や職場等と共有しておくことにより、万一の場合の素早い捜索救助の手掛かりとなるほか、計画に不備がないか事前に確認するものであることを意識付け、作成した登山計画書は、一緒に登山する仲間と共有すると共に、家族や職場、登山口の登山届ポストなどに提出しておく。
●道迷い防止
地図の見方やコンパスの活用方法を習得し、登山には地図やコンパス等を携行して、常に自分の位置を確認・把握するよう心掛ける。なお、GPS機器等位置情報を取得することができる機器を活用することで、より正確な位置を把握することができるため、道迷いの防止や、遭難発生時の迅速な場所特定につながる。
●滑落・転落防止
日頃から手入れされた登山靴やピッケル、アイゼン、ストック等の装備を登山の状況に応じて的確に使いこなすとともに、気を緩めることなく常に慎重な行動を心掛ける。また、滑落・転落する恐れがある場所を通過するときは、滑落・転落や上方からの落石に備え、必ずヘルメットを着用する。
●的確な状況判断
霧(ガス)や悪天候による視界不良や体調不良時等には、道に迷ったり、滑落等の危険が高まることから、「道に迷ったかも。」と思ったら、闇雲に進むことなく、今歩いてきた道(トレース)を辿り、正規の登山道まで引き返すなど、状況を的確に判断するとともに、早めに登山を中止するよう努める。
●新型コロナウイルス感染防止
山域を管轄する自治体の移動制限等の情報、公共交通機関の運行状況や山小屋等の運営状況を確認する。日頃から健康管理を行い、少しでも体調不良があれば、入山を控える。また、行動中は、周囲の人となるべく距離をあけ、気温が高い時は、熱中症のリスクが高くなることから、息苦しさや暑さを感じる際は、マスクを外すようにする。
ちなみにこの夏、東海3県では遭難者68(愛知11人・岐阜40人・三重17人)のうち、残念ながら4名の方が生還できませんでした。

■数値データ、図表は警察庁ホームページ「令和4年夏期における山岳遭難の概況」より引用。
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明日(15日)は終日取材のため更新を休みます。