
これから梅雨が明けて本格的な夏がやってきます。気になるのはランニング時のマスク着用について。ストライドが6月に行ったアンケートによると、ランニング中にマスクやフェイスガードを着けて走る人は62.3%にのぼりました。
これを受け、同社では新たに「マスクを着用したランニングの危険性」を検証する実証テストを実施。

実験は同社の呼吸ガス分析装置を用いて行われました。マスクを着用した10人のランナーがトレッドミルで走り、徐々に負荷を上げていった際の酸素摂取量を測定。

※マスク着用時の測定の様子(左)、マスク非着用時の測定の様子(右)
その結果、マスク着用時のランニングは着けていない時と比べて、心肺への負担が増大することが裏付けられました。

結論として、社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保てない場所でのランニングでは、マスク着用のうえ低〜中強度(80%VO2max以下)のゆったりとしたペースでのランニングが望ましい。
一方、高強度のランニング(90%〜100%VO2max)を実施する場合は、人混みを避けたコースで、マスクを着用しないで走ることを推奨するとしています。

巷では「マスクを着用して走ると心肺能力が向上する」という話も聞こえてきますが、こにつては以下のように否定的見解を示しています。
長距離ランニングのトレーニングにおける重要な要素の1つは「最大酸素摂取量(VO2max)の向上」で、100%〜120%VO2maxの運動強度が必要です。検証結果から分かるように、マスクを着用し呼吸が制限されている状態で、120%VO2maxのトレーニングを行うことは困難であるほか、長時間にわたる継続的なランニングができなくなります。
また、呼吸がしにくい状態で負荷の高いトレーニングを行うと、最適な動きではなく無理な呼吸を強制する「代償動作」によるトレーニングを実施することになり、必要以上の疲れや身体の左右のバランスの差が強調されるため、怪我に繋がる可能性があります。
このように、マスクを着用した状態での激しいランニングでは、トレーニング効果が上がらず危険なうえ、高地トレーニングのような効果向上は期待できません。
さて、「マスクランが悪い or 良い」の100か0の単純思考ではなく、走りに出かける際はマスクを携行し、臨機応変に着脱すればよいだけの話ではないでしょうか。感情と仮説だけで議論されることが多いこの問題だからこそ、今回のような科学的な実証実験は有意義であると考えます。
<関連トピック>
コロナ禍でランナー増加の一方、ランニング障害が問題に。(2020.6)
■株式会社ストライド 公式Webサイト
■ALTRA 公式webサイト
■「マスクを着用したランニングの危険性」実証テスト詳細