とくに気温が高い日はある程度の量の飲料を携行しなければ、たとえ低山とはいえ危ない。とりあえず、1.3リットル入るハイドレーション・パック(水筒が進化したようなもの)にアクエリアスを目一杯注入。片道10kmほどの行程だ。これぐらいあればじゅうぶん持つだろう。食料としておにぎり2つとチョコレートをウエストバッグに詰め込む。

ルートはちょうど愛知と岐阜の県境。愛知側と岐阜側で、木の種類や生え方が異なっているのが興味深い。東海自然歩道の特徴なのだろうか、やたらと階段状に整備されている部分が多い。これ、けっこうツライ。登りよりもむしろ、ひざにまともに衝撃を受ける下りの方がキツいかも。

尾根道とはいえ視界は一切開けず、行けども行けども鬱蒼とした森の中。とにかくひたすらアップダウンを繰り返すのみだ。登りはとても「走る」なんてことはできず、ひざに手を置いて「どっこいしょっ」とゆっくり進む。急な下りも怖くてあまりスピードを出せない。至る所に掲げられている「まむし注意」の看板が恐怖心をそそる。足下で「カサカサッ」と音がするたびにビクッとする。
それにしても誰一人として走ってないし歩いてもいない。ちょっと寂しいけど、大自然を独り占めしているような感覚もまたいいものだ。聞こえるのは自分の息づかいとウグイスの鳴き声のみ。

50分ほど走ったところでようやく第一山人発見! 年配の男性だ。もちろんランナーではなくハイカー。「こんにちは」と声をかけ合いすれ違う。

ほどなくして道樹山山頂へ。ここには小さな神社(祠?)がある他、とくに何もない。眺望も開けていないのでつまらない。神社に手を合わせ、先を急ぐ。ものの10分ほどで春日井市の最高峰「弥勒山」山頂に到達。
そこには「いったいどこにいたんだ」というぐらいハイカーたちが群がっていた。この人たちのお目当ては、なんといってもそのすばらしい眺望だ。ナゴヤドームやJRツインタワーなどの建造物がはっきり見える。遠く伊勢湾や養老山脈も見渡せる。手前に見えるのは築水池。

5分ほど休憩した後、ふたたび走り出す。この時点でハイドレーションパックのアクエリアス1.3リットルを飲み尽くしてしまっていた。内津峠まではあと30分ほど。なんとかいけるだろう。
やがて前半の目的地である内津峠に到達。定光寺からわずか10kmの行程を100分もかかってしまった。やはりロードと山は距離感覚がまったく違う。何はともあれ飲料水の自販機を探すが、な〜んにもない。そろそろのどが渇いてきているだけにちょっと焦る。とにかく水を求めて舗装道路を春日井市街地方面に2kmほどさまようと、由緒ありげな「内々神社」が現れた。そのすぐ脇に自販機を発見! 助かった。新たに1リットル分の飲料をパックに仕込み、再スタート。
築水池のほとりから見上げる弥勒山と道樹山。「あの稜線を走っていたんだ」と思うとちょっと感動。

「春日井市都市緑化植物園」でようやく昼食。おにぎり2個を食べる。

15分ほど休憩し、ふたたびスタート&ゴール地点の定光寺をめざす。植物園からは道樹山への登山道がのびている。ふたたび山に上がれば時間的にも距離的にも短くて済むが、太ももの付け根が激しく痛み出したため、起伏の少ないアスファルトの公道を選んだ。かなり遠回りになるが、太ももを上げられないので仕方がない。じりじりと照りつける太陽がうらめしい。ひっきりなしにハイドレーション・パックのチューブをちゅうちゅうする。いくらでも自販機があるので、山と違い安心感がある。
やっとゴール(定光寺)にたどり着いたとき、走り始めてすでに4時間半が経過していた。走行距離は32km。太ももとふくらはぎを中心にひどい筋肉痛に襲われたが、トレイルランニングはやっぱり「いい!」と実感。今度はどこの山を攻めようかと考えるのもまた楽しい。
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