宇宙山は、名古屋から電車で二十数分の東浦町「緒川」という小さな町にあるらしい。JR緒川駅を降り立つと昔ながらの民家が軒を連ねる古い街並が広がる。情報によると、宇宙山は駅から歩いて15分ほどだという。しかし歩いても歩いても山らしきものは見えてこない。木々が茂った丘のような森なら前方に見えるが、あれが宇宙山なのだろうか。方角は合っているはずなのでかまわず進む。
森のように見えていたのは「於大公園」という立派な公園だった。

於大? どこかで聞いたことがあるが、なんだっけ。まあいい。それにしても宇宙山らしき山はどこにも見当たらない。すると、公園内に設置してある園内マップに「宇宙山」の文字を発見。・・・ははあ、なるほど。そういうことだったのか。てっきり山=マウンテンだとばかり思っていた宇宙山は、「乾坤院」(けんこんいん)という寺院の山号だった。
総門をくぐってゆるやかな石段を上る。
なかなかいい雰囲気だ。

町指定文化財の山門。「乾坤院」の銘が輝く。

そして本堂へ。

ズームアップ!

さらに倍! すると・・・

「宇宙山」の文字が!
ついに宇宙と遭遇した瞬間である。
ちなみに本堂前のスペースは、真ん中の細い通路以外はほとんどが枯山水で占められている。「枯山水は宇宙を表現している」という人は多いが、ここ宇宙山においてはまさに宇宙以外の何物でもない。一つひとつの石が銀河に見えてくるから不思議だ。

よくよく調べてみるとこの「宇宙山 乾坤院」、その宇宙的スケールの名前に負けない、ビッグな由緒を持つ格式高い寺院だった! ヒントはさきほど通ってきた「於大公園」。そう、於大(伝通院)とはあの徳川家康の実母のことだ。歴史ドラマなどにたびたび登場するメジャー級歴史上人物の一人。宇宙山 乾坤院は於大の“実家”、水野家の菩提寺だったのだ。この町、緒川は於大の生誕地として有名で、毎年春には「於大まつり」が盛大にとりおこなわれるという。境内には家康が植えたと伝えられる「蘇鉄」や、ものすごくご利益がありそうな名前の「宇宙稲荷大明神」などの見所が点在している。
宇宙山は山(=マウンテン)ではなかったのでトレイルランは適わなかったが、その名にふさわしい遠大な歴史と由緒の一端に触れることができた。合掌。
